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2025.11.26
倉庫に換気は必要?法的義務の有無から効果・効率化のポイントまで
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倉庫の換気は物品保管のみなら法的義務はありませんが、事務室併設や危険物保管では必須です。除湿・カビ対策から効率的な換気方法、ショートサーキット対策まで実践的に解説します。
倉庫の換気は、保管商品の品質や従業員の健康、さらには火災リスクにまで影響する重要な項目です。湿気によるカビの発生、夏場の熱中症リスク、においの充満など、換気不足が引き起こすトラブルは決して少なくありません。
本記事では、倉庫での換気に法的義務があるのかをはじめ、換気が求められる具体的な理由や、効率的に換気を行うためのポイントを解説します。
倉庫の換気は義務?
倉庫をリノベーションしたり設備を増設したりする際、多くの方が気にするのが「法律上、換気設備の設置が必要なのか」という点です。結論として、物品の保管を目的とした一般的な倉庫では、原則として換気設備の設置義務はありません。
しかし、いくつかの重要な例外と注意点があります。
物品の保管のみの倉庫では義務化されていない
建築基準法第28条第2項では「居室」に対して換気設備の設置を義務付けています。ここでいう居室とは、建築基準法第2条第4号で「居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室」と定義されています。
一方、倉庫は「物品を保管・貯蔵するための建物」と位置づけられており、物品の保管のみを目的とする場合は「非居室」に該当します。そのため、建築基準法上は換気設備の設置が義務づけられていません。
ただし、これはあくまで法律上の判断です。実際には、換気を行わないことで湿気やカビの発生など、さまざまなリスクが生じる可能性があります。
出典:国土交通省「建築物における効率的な換気の促進に関する取組事例集」
出典:e-Gov法令検索「建築基準法第2条第4号」
事務室などを併設している場合はそこに換気設備が必要
倉庫内に事務室や作業スペースを併設している場合は注意が必要です。これらの空間は「居室」とみなされるため、建築基準法に基づき換気設備の設置が義務づけられます。
とくに、物流センターのように仕分けや梱包などの作業を継続的に行う施設では、作業エリアも「居室」に該当する可能性が高くなります。人が継続的に作業する空間であれば、法的義務の有無にかかわらず、従業員の健康と安全を守るために換気設備は必要と考えるべきでしょう。
特定条件の倉庫では換気が必須
物品保管のみの倉庫であっても、特定の条件下では法律によって換気設備の設置が義務付けられています。
まず、酸素欠乏症等防止規則第5条により、空気中の酸素濃度が18%未満になるおそれのある場所では換気が義務化されています。たとえば、ドライアイスを大量に取り扱う冷凍倉庫では、二酸化炭素の発生により酸素濃度が低下しやすいため、適切な換気設備が必要です。
また、危険物を保管する倉庫についても、消防法に基づく「危険物の規制に関する政令」により換気設備の設置が求められます。
第9条第10号では「必要な採光、照明及び換気の設備を設けること」、第10条第1項第12号では「危険物の蒸気又は可燃性の微粉を屋外の高所に排出する設備を設けること」と規定されています。
引火点が40℃未満の危険物を扱う場合は自動強制排出設備、40℃以上70℃未満の場合は強制排出設備または自動強制排出設備の設置が必要です。
出典:厚生労働省「酸素欠乏症等防止規則」
出典:総務省「危険物の規制に関する政令の一部を改正する政令(案)等に対する意見公募の結果及び改正政令等の公布」
出典:e-Gov法令検索「危険物の規制に関する政令第10条第1項第12号」
エアコンは換気設備にはならない
「倉庫にエアコンを設置しているから、換気も十分にできている」と考える方もいますが、これは誤りです。
エアコンは、室内機と室外機の熱交換によって空気を冷却・加熱する装置であり、基本的には室内の空気を循環させているだけです。そのため、エアコンを稼働させても外気との入れ替えは行われず、換気の効果は得られません。
適切な換気を行うためには、専用の換気システムや換気扇を設置するか、窓やドアを開放して外気を取り入れるなど、別途換気の仕組みを確保する必要があります。
倉庫で換気が必要な理由

法的義務がない倉庫であっても、換気を行うことには多くのメリットがあります。ここでは、経営的な視点も含めて、倉庫に換気が必要な理由を詳しく見ていきましょう。
倉庫内の温度調節
夏場の倉庫は、外気温の上昇に加え、屋根が直射日光で熱せられることで、想像以上に高温になります。とくに間仕切りのない大空間では熱がこもりやすく、場所によっては50℃を超えるケースもあります。
このような高温環境では、保管している商品の品質が劣化する恐れがあります。食品や化粧品、医薬品だけでなく、樹脂製品やゴム製品も変形・変質のリスクが高まります。
さらに、倉庫内で作業する従業員にとっても、熱中症や集中力の低下による作業ミス・事故などの危険性が増します。
適切な換気を行うことで、倉庫内にこもった熱を効率的に排出し、外気を取り入れられるため、温度上昇を効果的に抑えることができます。
除湿・カビ対策
湿気は、倉庫管理において注意すべき要素のひとつです。倉庫は一般的に気密性が高く、窓の少ない構造となっているため、湿気がこもりやすい環境になりやすい傾向があります。
カビが発生すると、保管中の商品に付着して商品価値を損なうだけでなく、段ボールなどの梱包資材を劣化させ、建物自体の寿命を縮める原因にもなります。とくに、食品・紙製品・衣類など湿気に弱い商材を扱う場合、カビ被害は経営にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
適切な換気によって湿気を外に排出し、新鮮な空気を取り入れることで、倉庫内の湿度を適切なレベルに保つことができます。
におい対策
タイヤなどのゴム製品、石けんや洗剤のような香料が強い製品、海産物の生臭さなど、保管する商品によっては特有の強いにおいを発生させます。また、カビ臭が倉庫内に充満することもあります。
空気の流れが悪い倉庫では、においが梱包材や建物の壁・床にしみ込み、常ににおいがこもった状態になります。そして、本来無臭であるべき商品にまでほかのにおいが染みついてしまうのです。
継続的な換気を行うことで、においの発生源から出たにおい成分を早期に排出し、定着を防ぐことができます。
火災対策
換気は火災リスクの低減にも大きく貢献します。倉庫内で可燃性の蒸気やガスが発生・滞留すると、わずかな火花や静電気でも引火や爆発のリスクが生じます。
また、換気不足により室温が上昇すると、自然発火のリスクも高まります。たとえば、油分を含んだ布や紙くずなどは、高温環境下で酸化反応が進み、自然発火する可能性があります。
適切な換気を行うことで、可燃性物質の濃度を危険域以下に保ち、室温上昇も抑制できます。
従業員のリフレッシュ
換気設備がなく空気がこもっている作業場では、従業員が休憩時に外に出た際、無意識に大きく深呼吸する姿がよく見られます。これは、倉庫内の空気が悪いことを身体が感じ取っているためです。
新鮮な空気が不足した環境では、集中力の低下、眠気、頭痛、倦怠感などの症状が現れやすくなります。
現在、人手不足が続くなかで、従業員の定着率を高めることは企業にとって重要な課題です。快適な労働環境を整えることは、離職防止と採用力の強化にもつながります。
感染症予防
新型コロナウイルス感染症の流行以降、換気の重要性が広く認識されるようになりました。ウイルスを含むエアロゾル粒子は、密閉空間では空気中に長時間とどまり続けます。
日本倉庫協会が公表している「倉庫業における新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」でも、換気の徹底が明確に求められています。具体的には、1時間に2回以上、1回につき5分間以上の換気が推奨されています。
感染症対策としての換気は、従業員の健康を守るだけでなく、業務の継続性を確保するうえでも不可欠です。
倉庫の換気、実は難しい?
「窓を開けて換気扇を回せば十分」と思われがちですが、倉庫のような大空間では、換気は想像以上に難しい課題です。
倉庫は間仕切りのない広い空間で、天井が高く、床面積が数百㎡、天井高6m以上というケースも珍しくありません。中心部から壁までの距離が長く、窓や換気扇を設置しても空気が全体に行き渡るまでに時間がかかります。
さらに、倉庫内には商品を保管するための棚やラックが所狭しと配置されており、これらの障害物が空気の流れを遮ります。棚の配置によっては、空気の通り道が極端に狭くなり、よどんだ空気が滞留しやすいデッドスペースが発生します。
そのため、倉庫の換気には専門的な知識と計画的な設計が欠かせません。建物の構造や棚の配置、気流の動きなどを踏まえ、空間全体で効率的に換気できる計画を立てることが重要です。
ショートサーキット現象とは
倉庫の換気を考える際に注意すべき現象のひとつが「ショートサーキット」と呼ばれるものです。
ショートサーキットとは、換気扇や窓の周辺だけで空気が入れ替わり、空間の中心部まで新鮮な空気が届かない状態を指します。給気口と排気口の距離が近すぎたり、配置が不適切だったりすると発生しやすくなります。
倉庫のような大空間では、このショートサーキット現象がとくに起こりやすくなります。窓や換気扇の間の距離が長いため、空気の流れが途中で弱まってしまうのです。また、棚やラックなどの障害物も、ショートサーキットが起こりやすくなります。
このため、倉庫の換気では自然換気だけでは不十分であり、機械換気を導入する場合でも、気流の設計を慎重に行う必要があります。給排気の位置関係、ファンの能力、誘引ファンの配置など、空間全体の空気の流れを考慮した計画が不可欠です。
必要換気量とは?
換気計画を立てるうえで基準となるのが「必要換気量」という概念です。必要換気量とは、倉庫内の空気環境を衛生的かつ安全に保つために、1時間あたりに供給すべき新鮮な外気の量のことです。
部屋の必要換気回数から計算する方法
必要換気量を算出する代表的な方法のひとつが「換気回数」を用いる方法です。換気回数とは、1時間に部屋の空気が何回入れ替わるかを示す指標です。
計算式は以下のとおりです。
必要換気量(㎥/h)=換気回数(回/h)×部屋の容積(㎥)
(※部屋の容積は、床面積(㎡)×天井高(m)で求められます。)
たとえば、床面積が500㎡、天井高が6mの倉庫で、換気回数を5回/hとした場合、部屋の容積は500㎡×6m=3,000㎥となり、必要換気量は5回/h×3,000㎥=15,000㎥/hとなります。
倉庫の換気回数については、一般的に5回/hが目安とされることが多いですが、保管する物品の種類、発生する臭気や湿気の量、作業する人数などによって変動します。
重要なのは、これはあくまで目安であり、実際には倉庫の個別の状況に応じて適切な換気回数を設定する必要があるということです。正確な必要換気量の算出や、それに基づく換気設備の選定は、専門家に依頼することをおすすめします。
倉庫内を換気する主な方法
倉庫の換気には、さまざまな方法があります。ここでは代表的な換気方法を紹介します。
自然換気
窓やドアなどの開口部を開放し、自然の風や温度差を利用して換気する方法です。設備投資が不要ですが、天候に左右されやすく、ホコリや虫の侵入を避けたい倉庫には向きません。
機械換気(第一種換気)
給気ファンと排気ファンの両方を機械で行う方法です。安定した換気量を確保でき、外気のフィルタリングも可能です。
機械換気(第二種換気)
給気のみを機械で行い、排気は自然排気に任せる方法です。倉庫内の気圧が高くなるため、外部からのホコリや害虫の侵入を防ぎやすいメリットがあります。
機械換気(第三種換気)
排気のみを機械で行い、給気は自然給気に任せる方法です。一般的な換気方法で、設備コストも比較的抑えられます。
有圧換気扇
強力な送風能力を持つ換気扇で、風圧に逆らっても確実に換気できます。工場や倉庫など、大空間の換気によく用いられます。
誘引ファン・エアー搬送ファン
空気の流れを作り出し、換気を促進するための補助設備です。ショートサーキット対策として有効です。
シーリングファン
天井に設置する大型ファンで、空気を撹拌して循環を促します。ただし、これだけでは換気にはならず、給排気設備と併用する必要があります。
それぞれの換気方法にはメリット・デメリットがあり、倉庫のサイズ、保管する商品の種類、予算、周辺環境などを総合的に考慮して選択する必要があります。
倉庫の換気を効率よく行うためのポイント
換気設備を導入しても、適切に運用できなければ効果は半減してしまいます。ここでは、換気効率を最大化するための重要なポイントを解説します。
空気の流れを考える
効率的な換気を実現するためには、まず空気の流れを正しく理解することが重要です。
窓やドアを開放して自然換気を行う場合、建物の対角線上にある2方向以上を開放することで、効果的に空気の流れを作ることができます。一方向だけでは空気の流れが生まれにくく、換気効率が大きく低下します。
機械換気を導入する場合も、給気口と排気口の位置関係が重要です。理想的には、給気口を低い位置に、排気口を高い位置に設置することで、温度差による自然な空気の流れも活用できます。
また、ショートサーキット現象を防ぐため、給排気口は十分に離れた位置に配置する必要があります。さらに、倉庫内の棚やラック、保管物の配置にも注意が必要です。これらが空気の流れを遮らないよう、通風経路を確保した配置計画を立てることが重要です。
空気の流れをつくる
自然換気だけでは十分な換気効果が得られない場合、強制的に空気の流れを作る必要があります。無風の日や、倉庫の構造上自然な通風が期待できない場合は、送風機やファンを活用して空気を動かします。
誘引ファンやエアー搬送ファンを戦略的に配置することで、倉庫内の空気を効率的に循環させることができます。とくに、棚の配置により空気の流れが遮られがちな場所には、積極的に誘引ファンを設置して空気の流れを助けることが効果的です。
空気の流れを可視化する
効率的な換気計画を立てるには、実際の空気の流れを把握することが重要です。
専門業者が行う手法としては、熱流体解析装置を用いた科学的な測定があります。これにより、コンピュータ画面上で空気の流れや温度分布を可視化し、換気設備の最適な配置を検討することができます。また、赤外線カメラによる温度計測も有効な手段です。
より簡易的な方法としては、発煙管を使用して気流の方向や速さを目視で確認する方法や、微細な水蒸気ミストを発生させて空気の流れを視覚化する方法があります。
実績のある業者に相談する
倉庫の換気は、一般的な建物と比べて専門性が高く、経験とノウハウが求められる分野です。効率的な換気システムを構築するには、空気の流れを正確に計算し、倉庫の構造や使用状況に合わせた最適な設備を選定する必要があります。
倉庫や工場の建設・改修において実績のある業者であれば、過去の事例やデータに基づいた確実な提案ができます。現場調査を行い、倉庫の構造、保管物、作業内容、予算などを総合的に考慮したうえで、最適な換気計画を立案してくれるでしょう。
換気システムへの投資は決して小さくありません。だからこそ、信頼できる専門業者に相談し、確実に効果が得られるシステムを導入することが重要です。
まとめ
倉庫の換気は、法的な義務の有無にかかわらず、保管商品の品質維持、従業員の健康管理、火災リスクの低減など、経営面で非常に重要な役割を担っています。
ただし、倉庫のような大空間では、単に窓を開けたり換気扇を設置したりするだけでは十分な換気効果を得られません。効率的な換気を実現するには、必要換気量の把握、適切な換気方式の選定、気流設計の最適化、そして実績のある専門業者による設計・施工が欠かせません。
正和工業のRENOXIA(リノシア)は、工場や倉庫、ビル、物流施設のリノベーション・改修工事を行っています。企画から設計、施工、アフターサポートまで一貫対応しており、実績と信頼に基づいた高品質なサービスを提供しています。
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